2019年の韓国、対日不買運動から見るネガキャンや炎上の不毛さと構造的欠陥。感情のまま気の向くままでは何も変えることはできない。

抗議運動をする女性の集団
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東洋水産株式会社に対して一部界隈で不買運動が発生しています。

過去にも、多くの企業が不買運動に悩まされたことでしょうが、ここで国家規模の不買運動を実施した韓国の事例を取り上げて、短期的な運動がいかに何も「変えられないのか」を考察していきたいと思います。

目次

韓国における日本製品の不買運動

2019年7月、日本政府が韓国向け輸出管理の見直しを発表したことを受け、韓国では日本製品に対する不買運動が広がりました。世論調査会社「リアルメーター」の調査によれば、2019年7月10日時点で不買運動への参加率は48.0%でしたが、その後も上昇を続け、9月19日には65.7%に達しました。

特に40代(73.7%)や50代(73.6%)の参加率が高く、支持政党別では進歩系野党「正義党」支持者の91.0%、与党「共に民主党」支持者の88.6%が不買運動に参加していました。

対日不買運動は、多くの日本企業の売上に大きな影響を与えました。以下はその中で最も影響が与えられた企業や業界です

ユニクロ(Uniqlo)

ユニクロを展開するファーストリテイリング・コリアは、不買運動の影響を強く受けました。2019年3月から8月の期間、春物衣類の販売不振と不買運動の影響で、売上が大幅に減少しました。

その後、2020年9月から2021年8月までの会計年度では、売上高が前年同期比7.5%減の5,824億ウォンとなり、営業利益は529億ウォンで黒字転換しましたが、依然として売上の減少が続いています。

また、韓国国内の店舗数も187店から134店に減少しました。

自動車業界

日本車メーカーも不買運動の影響を受けました。2019年8月の韓国輸入自動車協会(KAIDA)のデータによれば、日本車の販売台数は前年同月比で半減し、トヨタは59.1%減の542台、ホンダは80.9%減の138台、日産は87.4%減の57台となりました。特にホンダコリアは、2019年4月から2020年3月期の営業利益が前年同期比89.9%減少し、売上高も23.8%減少しました。2020年には、日産は年末までに韓国から撤退すると発表しました。

ビール業界

日本のビール輸出も大きな打撃を受けました。2019年8月の韓国へのビール輸出額は、前年同月比97%減少し、22万3,000ドルとなりました。

韓国が2020年1月に輸入した日本製消費財は、前年同月比で約36%減少しました。このように、不買運動は日本企業の売上や輸出額に直接的な影響を与えました。ただし、影響の程度は業界や企業によって異なり、一部の企業はその後の戦略見直しやマーケティング活動により、業績を回復させる動きも見られます。

効果はあるのか?

Forbes Japanの記事によると、人口の3.5%が参加する運動は、政治的変革をもたらす可能性があるとされています。これは非常に興味深い数字と言えるだろう。日本でいえば、437万5000人がボイコットをおこなえればよいというけいさんになるだろう。これは、過去の社会運動の分析から導き出された数値であり、一定の参加者数が集まることで、社会や政治に影響を与えることが示唆されています。

韓国の対日不買運動では、国民の3.5%以上が参加していたために効果があったとみるのが妥当ではないでしょうか。国民のおよそ60%がボイコットに参加していたことを考えると、不買運動のために必要な熱量はかなりの国家的運動になると思われます。

しかし、一方で不買運動の影響が実際にあったかどうかを評価するには、売上や市場シェアの変化を確認する必要があります。韓国での2019年の日本製品不買運動に関して、実際に影響があったのでしょうか?

いくつかの業界では、不買運動の影響が明確に見られました。

ユニクロ

ユニクロはアパレル業界大手ですが、韓国市場での売り上げは落ち込み、一部店舗が閉店に追い込まれました。店舗数は2019年の時点で187店でしたが2021年には134店に減少しました。

しかし、これらが全て不買運動に起因するかは議論の余地があり、韓国国民にとっては残念ながらあまり効果を及ぼさなかった可能性が高いでしょう。なぜなら2020年以降には新型コロナウイルスのパンデミックにより、韓国国内でも外出自粛や店舗の営業制限が行われたからです。これによって、そもそも韓国のアパレル業界の実店舗の多くが来客数を減少させる結果となり、売上にも影響を及ぼしました。

加えて、パンデミック中、消費者の購買行動はオンラインへとシフトしました。ユニクロもオンライン販売を強化し、デジタルプラットフォームへの投資を増やしました。その結果、物理的な店舗の必要性が相対的に低下し、一部店舗の閉鎖が進められました。

これらの要因が重なり、ユニクロは韓国市場での店舗数を減少させる結果となりました。しかし、近年では韓日関係の改善や物価高の影響もあり、ユニクロの売上は回復傾向にあります。2024年には韓国内での年間売上高が1兆ウォンを突破する見込みであり、店舗数も再び増加しています。

自動車

自動車業界(トヨタ・ホンダ・日産)も対日不買運動によって大きな影響を受けました。2019年8月、日本車の販売台数は前年同月比 約50%以上減少しました。特にホンダは 80.9%減、日産は 87.4%減 という大打撃を受けました。

しかし、これもまた一つの要因に過ぎないことが分かります。

もともと韓国では国産自動車メーカー、特に現代自動車グループは、デザインや技術面での革新を進め、品質を大幅に向上させました。これにより、韓国国内の消費者が高価格の日本車を選ぶ理由が薄れ、国産車への支持が高まりました。加えて、日本車のデザインが韓国の消費者の好みと合致しておらず、「ガラパゴス化」しているとの評価があります。さらに、革新性や果敢な投資が不足しているとの批判もあり、これが販売不振の一因とされています。

さらに、ドイツの高級ブランドなど欧州車は、社会的地位を誇示できる車として韓国の消費者に人気があります。近年、欧州車の価格が下がり、競争力が増したことで、日本車の相対的な魅力が低下しました。

これらの要因が重なり、韓国市場における日本車のシェアは大幅に減少しました。日本車メーカー各社は、エコカーの新モデル投入やオンライン販売の導入など、シェア回復に向けた取り組みを進めていますが、依然として厳しい状況が続いています。

不買運動の影響はあったか?

不買運動は、短期的には明確な影響があり、特にビール・自動車・アパレル業界は大きな打撃を受けました。しかし、長期的には影響が持続したかどうかを判断するには様々な要因が存在するのも確かです。とりわけ、売り上げなどが改善されるということは、運動参加者が再び購買者として戻ってくることを示唆しています。

また、日本製のパルプ製品や電化製品などにはあまり注目されなかったことも事実です。「日本」だとよくわかるような製品の不買ばかりであり、その影響は一部の業界・企業に限定され、大きな構造的変化にはつながらなかったといえるでしょう。

そのため、不買運動には多少の影響は与えられるものの、抜本的解決や改善には至らないというのが正直な話であるといえます。

今回の東洋水産の炎上騒動では、非実在型炎上と呼ばれるように、問題が存在しないにもかかわらず問題を改善せよという悪魔の証明を企業側がさせられていることになります。ましてや、誹謗中傷まがいの投稿まで散見されるに、今回の不買運動にどのような大義があるのでしょうか。その結果、日本人口の3.5%の参加者を動員できるかは不明です。誹謗中傷が目についてしまうと、一気にその正当性が薄れてしまうためです。

また、そうした抗議活動に応じる側にも問題があります。女性は声を大にして批判を行なっても良いはずですが、男女分断を引き起こしかねない男性側からの「女性蔑視」は避けなければなりません。それは女性として持っていて当然の権利です。

ただし、権利を持っていたとしても、またどれだけ不愉快であっても、あくまでも誹謗中傷は慎む方向でなければなりません。

もし、ボイコットをするならばそれを焚きつけて、女性差別があると断じたマスコミの側ではないでしょうか。彼らは第四権力として権力側に位置するアクターです。

彼らが消費者の影に隠れて世論誘導をしていることを憂慮しております。

抗議運動をする女性の集団

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この記事を書いた人

ほのぼの過ごしてるフリーライター。物語エッセイ、小説、時事記事などを書いてます。元リスク学研究員であり、現在情報コンサルにてインターネット・危機管理部門を担当。古書ECのプロジェクトを推進中。たまに俳句。積書が多く、横溝正史・京極夏彦が大好物。

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