アメリカのトランプ政権はホワイトハウスに新たに「信仰局(Faith Office)」を創設した。トランプ大統領は、政府内の「反キリスト教的偏見」を非難し、「信仰を取り戻す」ことを目的としてこの局の創設を発表した。
トランプ大統領は、ワシントンで開かれた全国祈祷朝食会で、キリスト教徒に対する宗教の自由への攻撃が拡大していると述べ、これに対抗するための一連の措置の概要を示した。
「我々は学校、軍隊、政府、職場、病院、公共の広場にいるキリスト教徒を守る」
「そして、我々はこの国を神の下の一つの国として再び一つにする」
この一連の「反キリスト批判」は何を意味するのだろうか?
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ポーラ・ホワイトと統一教会の関係
トランプ大統領には精神的なアドバイザーが存在する。それはテレビ伝道師でもある「ポーラ・ホワイト」氏である。彼女は、信仰が「物質的な富と個人的な成功をもたらす」と説く「繁栄的な福音」運動の著名人であり、正統派キリスト教指導者は彼女を「異端者」と非難している。



繁栄的な福音とは何か?
これは
「神は健康と富を正しい信仰の持ち主に与える」
という理念を信仰する宗教だ。
繁栄の福音は、19世紀末に開花した「ニューソート(新思想)」と呼ばれる形而上学の影響を受けている。
「ニューソート」とは、ボジティブな思考はポジティブな結果を生み、ネガティブな思考はネガティブな結果を生む──という具合に、人間の「意志力」に焦点を当てた思想だ。このニューソートから派生した考え方が、のちに自己啓発系の心理学へと発展する。また、この「意志力」という概念は、「なぜ世の中には病気が治る人と治らない人がいるのか」といった難問への回答として人気を博した。 引用:https://courrier.jp/news/archives/48467/
繁栄的福音によれば、人間の精神は、善悪の培養器であるらしい。つまりニューソートの概念に立てば、病や貧困はそうした悪しき精神を持った証拠であるため、常にポジティブであることが必要だとされる。
「私は勝者であり、私の成功は神がそれを望んだからだ」
「ゆえに、私は神に祝福されている」
この繁栄的福音は、テレビ伝道師を通じてアメリカ全土に波及した。
繁栄的福音の主張は「成功=神の祝福」である。
拡大解釈すれば「富は神からの祝福である」として物質主義的な思想を正当化するのである。つまり、この宗教的な価値観はただ一つ「富をどれだけ持っているのか?」がわかりやすい指標となるのだ。
では、貧困や病に倒れる人々はどうか?
それこそ、神から見放された者たちだと説くのかもしれない。なぜなら「神との関係の中で、富を持っている者は祝福されていると解釈できるから」である。
前述のポーラ・ホワイト氏はまさしくこの「繁栄的福音」運動の信奉者である。
そんな彼女は、2016年から2024年にかけて統一教会との関係も強めていることが明らかになった。ホワイト氏は、統一教会の政治部門である「天宙平和連合(UPF)」が主催するイベントに度々登壇しており、統一教会の創設者である故・文鮮明牧師の妻である韓鶴子氏を称賛している。
2022年12月5日に韓国で開催された「朝鮮半島の平和のための祈祷集会」では、ホワイト氏は韓鶴子氏を「神からの宝石」と呼び、その働きを称えた。このイベントでは、統一教会の信者や宗教指導者らが集まり、朝鮮半島の統一について話し合われた。
また、ホワイト氏は以前にも、2017年にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われた統一教会の「平和は私から始まる」集会でヘッドライナーを務めており、統一教会との結びつきを強めてきた。
トランプ政権におけるポーラ・ホワイトの役割
ホワイト氏は、第一期トランプ政権時代、ホワイトハウスの「信仰に基づく事務所(Faith and Opportunity Initiative)」の責任者を務めた。この事務所は、宗教団体が政府政策に関与するための窓口として機能し、トランプ大統領がキリスト教右派の支持を固めるための重要な役割を果たした。
ホワイト氏は「繁栄の福音」を唱え、信仰を通じて経済的成功を収めることができると説く伝道師である。この教義は、従来のキリスト教会からは異端視されることも多いが、トランプ大統領との関係を通じて彼女の影響力は拡大した。
さらに、ホワイト氏はトランプ大統領の宗教的な正統性を保証する役割も担い、彼の政策を「神の導きによるもの」と主張することで、福音派キリスト教徒の支持を獲得することに貢献した。
ホワイトハウス「信仰局」の影響
トランプ政権は、ホワイト氏を中心に「信仰局(Faith Office)」を設立し、政府の政策決定に宗教的要素を強く組み込んだ。信仰局の設立は、特に福音派キリスト教徒の支持を得るための施策の一環と見なされている。
信仰局の活動の中には、宗教団体と政府の連携を強化し、宗教の自由を強調する一方で、キリスト教右派の価値観を政治に反映させる意図があったと考えられる。これは、宗教的少数派や人工中絶の賛成派、LGBTQ+コミュニティにとっては不安材料となった。
しかし、公共機関におけるキリスト教右派が迫害されていたことが事実であれば、それもまた信教の自由に反する重大な違反であるだろう。問題はその「迫害」の基準が何なのか?であるが。
統一教会問題の今後
一方で、統一教会は、政治的影響力を持つことを目的としており、世界中の指導者を取り込む戦略を取っている。特に、統一教会の天宙平和連合(UPF)は、政治家や宗教指導者を集め、平和や宗教間対話をテーマにしたイベントを開催することで、その影響力を拡大している。
ポーラ・ホワイト氏が統一教会と接点を持つことは、統一教会の信頼性を高めることにつながる可能性がある。統一教会は、日本を含む世界各国で物議を醸しており、特に日本では、2022年の安倍晋三元首相暗殺事件をきっかけに、統一教会と自民党の関係が問題視された。
そしてその実行力もすでに証明している。
統一教会は、韓国国内における「朝鮮半島の統一を悲願とするナショナリズム団体」である。そしてトランプ政権は一期目に、北朝鮮との会談を実現した。しかし、半島統一には至らず、なぜか北朝鮮がその対話のプロセスを閉ざしたのだった。そして北朝鮮は現在、ロシアに急接近している。
高麗大学の第十三代総長であるホン・イルシク氏は、中国文化の研究を行う際、文鮮明に資金援助を得ていたと回想している。加えてそんな高麗大学では、現在問題になっているフジテレビの日枝久氏が名誉博士を授与された場所である。日枝氏は森喜朗との関係が深く、2000年以降、急接近していた。森氏も「日韓海底トンネル構想」において日本側で唯一の政治家による発起人である。
同団体は、ホワイト氏との関係を深めることで、国際的な影響力を増し、政治に介入する動きが強まる可能性がある。また、米国におけるキリスト教右派と統一教会の接近が進むことで、同団体の過度な寄付金や商法に歯止めが利かなくなる恐れがある。



ポーラ・ホワイト氏は、トランプ政権の宗教政策の中心人物として活動し、統一教会とも深い関係を築いている。統一教会は、政治的影響力を強めるために、宗教指導者や保守的な政治家と連携を深めており、ホワイト氏の統一教会支持は、今後の米国政治にも影響を与える可能性がある。
統一教会問題は、日本や韓国だけでなく、アメリカの政治にも影響を及ぼす重要な問題となっており、ポーラ・ホワイトの動向は、現状のホワイトハウス内で非常にホットな話題であるだろう。