イングランド南部サリー州ニューディゲートで、2018年から2019年にかけて発生した100回以上の小規模な地震が、石油採掘によって引き起こされた可能性があるとする研究結果を、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ(UCL)の研究者らが発表した。




地震と石油採掘の関連性
これまでの英国地質調査所(BGS)などの調査では、地震は偶発的に発生した自然現象とされ、UKオイル&ガス(UKOG)のホースヒル掘削作業との関連性は否定されていた。しかし、UCLのマシュー・フォックス博士とフィリップ・メレディス博士は、最新の地質学的知見と100万回以上のコンピューターシミュレーションを用いた研究を実施。その結果、地震と石油採掘の関連性がこれまで考えられていたよりも強いことが示唆された。
震源地はホースヒル掘削現場から5〜10キロ離れており、10キロ以上離れた場所でも確認されていた。フォックス博士らの研究によると、石油採掘により地下の圧力が変化し、岩石の動きを引き起こして地震を誘発した可能性がある。
そのため、石油採掘と地震の相関関係は非常に強く、関連性が示唆されている。しかし、偶然である可能性も残されているため、さらなる研究が必要だろう。



石油採掘の影響と規制の見直し
UKOGは昨年10月までホースヒルでの採掘を管理していたが、環境活動家らによる訴訟によって、サリー州議会が計画許可を取り消した。これにより、UKOGが実施する石油採掘作業は停止されている。
UKOG側は地震は自然現象に由来したものであるため、問題は解決しているという姿勢を崩していない。
しかし、サリー州での小規模地震と油田の関連性は無視できず、地震の発生時期と石油・ガスの採掘作業の相関関係が確認されている。米国では、石油採掘に伴う流体注入による圧力変化が既存の断層の滑りを引き起こし、地震を誘発する事例が多数報告されている。
今回のUCLの研究は、イングランド南部で発生した地震と石油生産の関連性を示唆した初の本格的な調査となる。
活動家のサラ・フィンチ氏は2019年に訴訟を起こし、昨年10月にはホースヒルでの石油採掘の許可が取り消された。「今回の研究結果は、私たちが長年警告してきたことを裏付けるものです。地震リスクが明らかになった以上、政府と企業は採掘計画を慎重に再検討すべきです」とコメントした。
今後の展望
フォックス博士らの研究チームは、この結果に因果関係が存在するのかを明らかにするため、今後さらに統計分析を進め、偶然の可能性を正確に数値化する予定であるという。現在のデータでは、石油採掘が地震を引き起こした可能性が高いことが示唆されている。しかし、新しい調査をしなければその因果は解明できないだろう。
現在、英国ではクリーンエネルギーへの転換が進められている。問題となっているUKOG社は、水素貯蔵など再生可能エネルギー分野への移行を進めているようだ。
今回の研究結果を受けて、石油・ガス採掘の環境リスクを再評価する必要性が高まっている。