埼玉県八潮に続き愛知県名古屋でも道路陥没!八潮陥没事故の原因は何だったのか?我々が公共インフラ事業を「無駄」といえない理由。政府は即刻、インフラ投資に全力を入れよ

道路陥没で事故に遭う車のイラスト
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2月6日の朝、愛知・名古屋市で道路が突如陥没した。これにより、一般自動車の前輪がはまってしまった。近くでは水道管の工事が行われていて、警察が関連を調べているが、果たして工事が原因だろうか。

早急の原因解明が待たれる。

しかし、八潮市の陥没事故はまだ収束の見込みが立っていない。

目次

事故の概要

2024年1月28日、埼玉県八潮市で道路が突如として陥没し、通行中のトラックが穴に転落する事故が発生した。運転手の男性(74)は現在も行方不明で、救助活動が難航している。陥没の原因は地下の下水道管の破損とみられ、その影響で穴の規模は拡大し続けている。

事故の原因

今回の陥没事故には、劣化した下水道インフラと地盤を考慮しなかった道路整備、交通荷重などの問題が指摘されている。

問題の下水道管は1983年に敷設されており、約42年が経過していた。

一般的に、下水道管の耐用年数は50年とされているが、管の内壁では長年にわたる汚水の影響で硫化水素が発生し、酸素と反応して硫酸が生成される。これがコンクリートや金属の腐食を進め、管に穴が開いたと考えられている。

加えて、事故現場は中川低地と呼ばれる軟弱地盤の上にある。この地域の地質は主に砂やシルト層で構成されており、液状化しやすい特徴がある。地下水の流れや地震などの影響で、地盤が徐々に沈下し、下水道管に過度な負荷がかかっていた可能性が高い。

救助と復旧の課題

事故発生から1週間が経過したが、穴の拡大は続いている。報道機関の航空写真からは事故当初より拡大し続ける陥没穴が見られる。

埼玉県の発表によると、当初幅10メートル、深さ5メートルだった穴は、2月3日時点で幅31メートル、深さ16メートルに達している。現場の地盤は砂や粘土質で構成されており、不用意にがれきを撤去するとさらなる崩落の危険がある。

下水道管の破損により、汚水が漏れ続けている。これにより救助作業員の安全確保が難しくなっており、県は下水道管の破損を受けて、周辺12市町の住民約120万人に節水を要請した。しかし、現状では下水の流れを完全に止めることは困難であり、住民の生活基盤でもある節水をさせるのは酷というものである。

そのため、バイパス管の設置などの対策が講じられている。

県は現場の復旧工法を検討する委員会を設置し、被害を受けた下水道管を補修するのではなく、事故現場を迂回する新設管の敷設を提案した。この工事には2~3年の期間が必要とされている。

全国的なインフラ老朽化の背景

今回の事故は、埼玉県の問題にとどまらない。この事件は日本における下水道インフラの老朽化問題を浮き彫りにした

国土交通省のデータによると、2022年度の1年間で下水道管の破損が原因で発生した道路陥没事故は全国で約2600件にのぼるその多くが老朽化によるものである。

しかし、下水道管の更新率は年間わずか0.6%にとどまり、現在のペースでは全ての更新を終えるのに150年以上かかる計算になる。

公共事業の削減がこの問題を深刻化させたとする指摘も多く存在する。事実、2000年代以降、行政の「無駄削減」政策により、インフラ整備の予算は縮小され続けていた。

橋本内閣以降の歴代政権は、財政健全化の名のもとに公共事業を大幅に削減し、インフラの更新や維持管理を後回しにしてきた。

橋本内閣と小泉内閣が推進した「財政改革」、しかし実態はインフラの衰退?

橋本龍太郎内閣は、財政構造改革を掲げ、1997年に「財政構造改革法」を成立させた。この政策のもと、公共事業費は大幅に削減され、日本全国のインフラ維持管理予算は年々縮小する方針へとシフトしていった。その結果、老朽化した道路、橋梁、下水道などの点検や改修が後回しにされ、多くのインフラが危険な状態に陥った。

この影響は、現在の道路陥没事故や水道管破裂といった事例で顕在化している。1990年代まではインフラ更新が定期的に行われていたが、橋本内閣の公共事業削減方針が導入されて以降、耐用年数を超えた設備が放置される事態が常態化した。

小泉純一郎内閣は、「聖域なき構造改革」を掲げ、公共事業削減を一層推し進めた。特に地方のインフラ整備が大幅に削られ、地方自治体は独自の財源確保を強いられた。しかし、税収の少ない自治体では必要なインフラ整備が進まず、現在の地方における道路の崩落や水道管の破裂といった問題につながっている

小泉政権時代には、自治体に対する補助金削減も進められたため、結果としてインフラの維持管理は一層困難になった。耐用年数を超えかけている設備が増え続ける一方で、政府は対策を講じることなく、問題を先送りにした。

民主党政権でのさらなる公共事業縮小と歯止めをかけた安倍政権

2009年に発足した民主党政権(鳩山・菅・野田内閣)は、「コンクリートから人へ」というスローガンを掲げ、公共事業費をさらに削減した。特に下水道や橋梁の補修費用は削られ、今後のインフラ維持に必要な資金が大幅に不足することとなった。

民主党政権下では、公共インフラの必要性よりも、短期的な「財政健全化」が優先され、結果としてインフラの崩壊を加速させた。八潮市の道路陥没事故のような事態は、この時期に適切な点検や補修が行われていれば防げた可能性が高い。

安倍晋三内閣は「国土強靭化」を掲げ、大規模災害に備えたインフラ整備を進める方針を打ち出した。これは、2011年の東日本大震災の影響を受けたもので、地震や津波、台風などに対する耐久性のある国土づくりを目指すものだった。

事実、2018年の西日本豪雨や2019年の台風19号(令和元年東日本台風)を受け、安倍政権は「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を実施し、3年間で約7兆円の予算を投入した。これによって、河川の氾濫対策、堤防の強化、道路や橋梁の補修などを進めた。

また、2020年の笹子トンネル崩落事故を受け、トンネルや橋梁の点検を義務した。しかし、その実行責任は自治体であった。自治体は財源負担の問題が大きいことを理由に点検はするが、修繕はしない選択肢も残された。

安倍政権の2013年「インフラ長寿命化計画」では、道路・橋・トンネルなどの老朽化対策に予算を割り当てたものの、実際には予算不足や人材不足によって、多くの自治体で計画が遅れた。また新型コロナウイルスのあおりを受けて、予算確保の必要が迫られた。

菅義偉政権に至っても、パンデミックの影響で下水道や道路補修に対する政策は後手に回り、抜本的な改革は行われなかった。公共インフラの老朽化が進行し、点検業務の人手不足も深刻化する中、政府の対応はあまりにも遅かった。

岸田政権の無策とインフラ危機の拡大

岸田文雄政権においても、パンデミックの影響は続いていた。

岸田前首相は、公共事業の増額を掲げながらも、その実態は5Gや光ファイバー網等のデジタルインフラの新規事業の拡大に重点が置かれ、老朽化インフラの維持管理に対する予算は依然として不十分であった。加えて、岸田政権の「骨太の方針」では、財政健全化が強調されており、インフラ維持のための十分な投資が期待できない。

多くの自治体は赤字運営を余儀なくされており、国や地方の補助金なしでは維持できない状態が続いている。さらに、下水道を管理する自治体職員の数も1997年の約4万7000人から2021年には2万6000人に減少しており、適切な点検・維持管理が困難になっている。

緊急性が増す下水道投資

今回の事故を受け、下水道管の点検頻度の見直しや更新投資の必要性が改めて指摘されている。橋本淳司氏によれば、一部の自治体ではAIやドローンを利用したインフラ監視システムが導入されつつあるが、財政難の影響で普及は容易ではない。

今後の課題と必要な対策

この事故は、日本のインフラが老朽化の限界に近づいていることを示している。橋本淳司氏によれば、下水道管の投資を加速するためには、国が主導して財政支援を行う必要がある。さらに、都市部ではインフラ維持管理の人材不足が深刻化しており、配管工などの専門技術者の育成も急務だ。

また、市民の理解と協力も重要である。日常的な水の使用量を減らす努力や、異常を早期に報告する仕組みの整備が求められる。

八潮市の事故は、日本全国のインフラ維持管理のあり方を問い直す契機となるだろう。これを教訓に、今後の対策が迅速に進められるかが問われている。

安倍政権下で行われようとしていた「国土強靭化」を推進しなければならないだろう。

参考資料

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この記事を書いた人

ほのぼの過ごしてるフリーライター。物語エッセイ、小説、時事記事などを書いてます。元リスク学研究員であり、現在情報コンサルにてインターネット・危機管理部門を担当。古書ECのプロジェクトを推進中。たまに俳句。積書が多く、横溝正史・京極夏彦が大好物。

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