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米テクノロジー大手Googleの親会社であるアルファベットは、これまで掲げていた「AIを武器や監視ツールの開発には使用しない」とする方針を撤回するようだ。
同社は、米国の国家安全保障を支援するためのAI開発に協力する方針を示した。この動きは、AI技術の進化と地政学的な情勢の変化を踏まえたものとされている。
昨年末には、これまで軍事利用を禁止していたオープンAIが、2024年12月に防衛企業アンドゥリルと提携し、米軍のドローン防衛システムの開発を支援すると発表したばかりであった。

AI原則の変更と背景
アルファベット社は、2018年に策定したAI原則を見直し、危害をもたらす可能性がある用途を除外するセクションを削除した。Googleの上級副社長ジェームズ・マニカ氏と、AI研究部門グーグル・ディープマインドを率いるデミス・ハサビス氏は、自身のブログにてこの方針を擁護した。
「民主的な政府と企業が協力し、国家安全保障を支えるAIを開発する必要がある」「自由、平等、人権の尊重といった基本的価値観に基づき、民主主義国家がAI開発を主導すべきだと私たちは信じています」と彼らは述べた。
またロシア・ウクライナ戦争をきっかけにドローンやAIに関する軍事的な第三次産業革命が発生している。そのため、同社は試金石となる二つの戦闘地帯に自社のAIインフラを提供したい節がある。国連がドローンやAIの戦争利用に関する協議を開始したが、本格化には至っておらず、「今の内に作っておきたい」という思惑もあるのだろう。
例えば、人間の判断なく、AI技術を使って敵を殺傷する「自律型致死兵器システム(LAWS)」が開発されているが、楚の利用について国際的なルールは全くない状態である。
パレスチナ自治区では、イスラエル軍がAIを導入し、グローバルサウスの住民に向けて実験する可能性を懸念している。
「イスラエルはガザでの殺戮にAIを使っている」と批判した。
イスラエル政府は「人間の判断がないままに攻撃対象を選ぶAIは開発していない」と憤る。
軍事利用と監視技術への関与
この方針転換により、Googleが軍事技術や監視システムにAIを提供する可能性が高まっている。過去には、2018年に米国防総省のAIプロジェクト「プロジェクト・メイヴン」へのGoogleの関与が社内外で批判され、従業員の抗議により契約を更新しなかった。しかし、最近では再び政府との協力が進められている。
ワシントン・ポストによれば、Googleはイスラエル軍(IDF)にAIツールを提供していることが確認されたという。IDFのAI活用は急速に進んでおり、特にガザ地区の軍事作戦において監視画像の分析や標的特定のために使用されているという。イスラエル軍は「ハブソラ(Habsora)」と呼ばれるAIツールを活用し、傍受した通信や衛星画像を基に軍事標的を特定しているとされる。
プロジェクト・ニンバスを巡る論争
GoogleとAmazonは、イスラエル政府の技術近代化を目的とした12億2000万ドル(約1800億円)規模のクラウドコンピューティング契約「プロジェクト・ニンバス」の請負業者である。この契約には軍事目的のAI利用が含まれる可能性があり、人権団体から強い懸念が示されている。
「ノー・テック・フォー・アパルトヘイト」などの活動団体は、「このプロジェクトがパレスチナの民間人に対する軍事攻撃を支援する可能性がある」と警告しており、GoogleとAmazonの従業員に対し、契約の撤回を求める運動を展開している。
2023年には、Googleの従業員が社内で抗議活動を行い、少なくとも50人が解雇された。この抗議活動は、同社が倫理的責任を果たしていないとする従業員の不満が背景にある。
市場の影響と今後の展開
Googleは2024年のAI関連投資として750億ドル(約7兆5000億円)を計画しており、AI研究、検索機能、インフラ整備に巨額の資金を投入する方針を示している。しかし、アルファベットの年末決算報告では、市場予想を下回る結果となり、株価が下落した。
AI開発企業は中国のDeepSeekの低価格開発の実現によって、設備投資に関する減額を行なうよう投資家から圧力を加えられている。これにより、AIの価格競争が起きる可能性が高まっている状況だ。そのため、資金力のある企業から次々に安価なAIを提供する可能性もある。
インデックスボックスによると、アルファベットの設備投資は2023年で 500 億ドルに達していると報告している。
現在、AI技術の軍事・監視用途への応用は世界的に議論を呼んでいる。AIを活用した戦争や監視システムのリスク、民間人への影響、倫理的問題など、多くの課題が山積している。Googleの方針変更は、テクノロジー企業の社会的責任と利益追求のバランスをめぐる議論をさらに深めることになるだろう。


