日本におけるクルド人問題は、近年ソーシャルメディアを通じて急速に拡散し、現実世界にも影響を及ぼしている。埼玉県川口市や蕨市を中心に居住するクルド人は、日本国内での差別や偏見に直面している。本稿では、日本におけるクルド人の現状、ソーシャルメディアが果たした役割、そして今後の課題について論じる。
日本におけるクルド人の歴史と現状
クルド人は独自の言語と文化を持つ民族であり、トルコ、シリア、イラク、イランにまたがる地域に居住している。日本には1990年代から渡来し、主に埼玉県南部の川口市や蕨市に定住している。現在、埼玉県には約3,000人のクルド人が暮らしていると推定されている。
クルド人問題での最初の躓きは、平成16年当時、法務省が難民認定における現地調査を実施した際、多くのケースが「出稼ぎ」の可能性があるとの報告書を出していたことである。この報告を「人権侵害」として日本弁護士連合会が指摘し、法務省が同調査結果を封印した。
しかし、その後、法務省が難民として認定したクルド人が少数であることから、日弁連の報告書の公開阻止は逆に差別を助長させた可能性が高い。なぜなら、報告書が世間の目に晒されなくとも、クルド人は「難民」として日本に受け入れることがないからだ。
「なぜ、クルド人が難民認定を受けられないのか?」
という根幹にかかわる理由があれば、その難民に該当する条件の「緩和」や「解釈の変更」を世論に求められたはずだ。にもかかわらず、日弁連はその機会を阻止した。
その結果、産経新聞社がこの報告書内容の一部を取り上げて、「出稼ぎ村」と断定して「高級住宅に居住している」などの内容をクルド人非難の根拠としたのだ。
実際、日本はトルコにあるクルド系政党PKKをテロ組織と認定している。
これに際して、PKK関与の疑いがある人物がトルコで「逮捕状」が発行されている可能性があるため、照会しようとしたのが発端である。
テロ組織との関与が疑われている、難民申請としての条件が認められていないなどの理由から、クルド人の多くが自らの証明をできず、調査不足によって難民認定を受けられないとしたら問題である。1990年代に亡命申請をしてきたクルド人の多くはPKKとトルコ政府の紛争から逃れてきた人々である。つまり無辜の一般人が多くいるにもかかわらず、一部のPKK支持者が原因で難民認定を受けられないとしたら、これほど不運なことはない。「出稼ぎ」目的も同様である。
日弁連は問題を先送りしたようにしか思えない。彼らも国内の反クルド団体と同様に「クルド人問題の長期化で利益を得る集団」だからである。

結果として、多くのクルド人は不安定な在留資格のまま、日本社会で生活したままである。
情報戦に敗北している日本人
近年、ソーシャルメディア上で反クルド感情が急激に高まっている。特にX(旧Twitter)を中心に、クルド人に対する否定的な投稿が拡散している。だが、日本におけるクルド人問題において私は「日本人の情報戦の弱さ」を実感する。
実際、拡散されている反クルド的なメッセージのほとんどは国外の「自称クルド人」を名乗る外国人によって発信されている。
トルコ在住の34歳の男性「タイフン」というユーザーは、日本国内にいるクルド人を装って日本語で挑発的な投稿を行っている。彼はX上で「日本はクルド人の故郷です。公用語はクルド語であるべきです」といった極端なメッセージを発信し、日本国内の反クルド感情を煽った。
今現在、日本人の反クルド感情の根底を形成したポストのほとんどはこの「タイフン」によるものである。しかも彼はクルド人ではなく、日本に行ったことがないトルコ人なのだ。彼はイスタンブールのIT企業に勤める社会人である。
トルコで何が起きているのか?
PKKという存在がクルド人排斥の大きな要因であるかもしれない。クルド人は、誰がPKK支持者なのかが分からずに、無実の人間であっても弾圧される場合があるようだ。タイフンは「警告だ」と主張しているようだが、PKK支持者でないクルド人からすれば単なる迷惑でしかない。
実際、タイフンの投稿の多くは「日本人を差別するクルド人」を装ったものなのだ。
タイフン以外のトルコ人も、Google翻訳を用いた日本語で「反クルド感情を煽る投稿」を率先して行う。
あろうことか、そうした反クルド感情が暴走した結果、被害を受けた日本在住のクルド人を友人に持つ一部のクルド人が日本人に対して差別的な言動を投稿するのだ。すると反クルドを掲げる人々は「やはり、クルド人は攻撃的な人間だ、日本は気を付けなければならない」とエビデンスを得て沸騰するのである。



そして、在日韓国朝鮮人を非難していた団体は、そのロジックをクルド人にも向ける。
クルド人はある種の「利権」を持っているというのである。
実際、このロジックはさらにクルド人たちを追い詰めた。日本で難民認定を受けたり、永住権を得たいと考える外国人の中には「クルド人が違法に滞在できるのに、私たちができないのはおかしい」として日本のネット上で反クルドを助長する投稿を行うのである。
例えば、2015年に東京のトルコ大使館前で発生したトルコ人とクルド人の乱闘動画が、「日本でクルド人が暴動を起こしている」とする虚偽の情報の拡散も、外国人による翻訳がなされ「反クルド」を煽るような投稿とともに拡散された。これにより、日本国内外問わず、反クルド感情がさらに強まったといえるだろう。
実際、クルド人だと断定する画像や映像は出所が不明な場合が多い。歩きたばこをするクルド人の画像が出回ったこともあったが、実際にその人物は彫りの深い浅黒い肌をした外国人風の男性であるとしかわからず、彼がクルド人なのか他の中東・アラブ系の住民なのか、インド人なのか、それとも単純に彫りの深い日本人なのかすらわからない。
実際に会ったことがないから「わからない」が正解なのである。
しかし、一部のユーザーによって、その画像は「クルド人である」というのが既成事実化されている。これは非常に問題である。なぜなら、もしその男性がクルド人以外の別の外国人であるならば、その違法行為を見逃してしまっていることになるからだ。
クルド人のベールに隠れれば、他の国の外国人が犯罪を犯しても「クルド人だ」と名乗ればよいのだ。少なくとも自国の名誉に傷はつかないだろう。また、反クルドの他の外国人がわざと日本で騒ぎを起こしている可能性だってある(考えすぎかもしれないが)。なぜなら、日本は外国人を逮捕せず、「不起訴」にする国だからだ。いざとなれば、逃げればよいのだ。中国人が靖国神社に落書きをしたのと同じ論理である。
しかし、一部のクルド人が問題を起こしているのも事実である。とりわけ筆者が怒りを覚えるのは少女を強姦したクルド人の暴走である。
当該クルド人は、幼少期から弱い立場の子どもに対して恐喝も行っていたという。そして女性を妊娠させては「結婚した」と周囲に吹聴したのである。
問題は日本政府が彼のような外国人に対しても一律に「強制送還しなかった」点である。そもそも10代の少女を一度でも暴行するのは「異常な行為」なのだ。
彼が原因でクルド人はさらに窮地に陥っているのが現状である。当該クルド人をシンボルに国内外の「反クルド団体」は攻勢を強めているというのが現状だ。ニュースにおいても大々的に「クルド系」と書かれてしまっては、関心のない日本人にも漠然と「クルド人って危険なのか」というイメージを植え付けてしまうのである。
日本社会におけるクルド人の現実
ソーシャルメディア上で拡散される反クルド感情とは対照的に、川口市や蕨市の地元住民の中にはクルド人と共存しようとする動きも見られる。
川口市の飲食店を経営するクルド人は、「日本から出て行け」という電話による嫌がらせを受けている。一方で、20年以上クルド人と共存してきた地元の店主は、「知らない人がなぜ『出て行け』と言えるのか」と疑問を呈し、地域のクルド人との交流があることを強調している。
川口市は、外国人住民向けに多言語ポータルサイトを開設し、生活ルールを周知するなどの取り組みを進めている。
埼玉県警の統計によると、2023年の外国人犯罪者の割合は全体のごく一部にすぎず、「クルド人による犯罪の急増」といった言説はデータと一致していない。実際、外国人犯罪の割合は、中国人とベトナム人が多い。とりわけ、中国人は人口の問題で犯罪が多いイメージがあるが、ベトナム人の場合は技能実習に失敗して行方をくらまして犯罪組織の犯罪に加担させられるという実態がある。質的には、ベトナム人犯罪にどう対応するかを議論しなければならないだろう。
以上のことから、クルド人問題が複雑化した背景には国外勢力による情報戦が存在する。また一部のクルド人もそうした情報戦に加担し、日本人に対する「反クルド感情」を悪化させているのだ。加えて、一人のクルド人の蛮行が、まるで百人のクルド人がそうした蛮行を日常的に行っているように想起させてしまう。クルド人擁護に回る日弁連の立ち振る舞いも問題視される。
多くの無辜のクルド人の平穏が戻ることを切に願う。














