BBCの報道によればゼレンスキー大統領は記者会見の中で「NATO加盟と引き換えにウクライナ大統領の地位を”放棄”する用意がある」と明言した。

ゼレンスキー大統領の発言整理
ウクライナのゼレンスキー大統領が記者会見で発言した内容は、
「ウクライナの平和のため」あるいはNATO加盟のためなら、ウクライナ大統領の地位を放棄する用意がある
米国とウクライナの間の潜在的な鉱物資源取引について、提案は今のところ彼らが望んでいるものではないが、協議は前進しており、ウクライナは「共有する用意がある」と述べた。
トランプ大統領が「ゼレンスキーは独裁者だ」と発言したことを受けて「私は独裁者ではない」と反論し、ロシア軍が再び侵攻しないよう米国の指導者が「必要」だと述べた。
世界の指導者たちはウクライナに向かい、戦争終結に向けた安全保障について会議する。これが「転換点」となることを期待していると述べた。
紛争終結に関わるあらゆる協議にウクライナが参加する必要があるという主張を強調した。これはゼレンスキー大統領が数週間にわたって断固として主張してきた。
ゼレンスキー大統領は、米国がウクライナを軍事的に支援しない場合、ウクライナのヨーロッパ同盟国による支援は自国の防衛継続に十分かと問われた。ゼレンスキー大統領はこれに対し、米国の支援は「金銭だけではない」とし、「制裁も非常に重要だ」と反論した。また、米国のみがライセンスを持っている武器の種類もあり、欧州はそうした武器をさらに提供できるが、ライセンスは米国が保持しているため、交渉は継続する必要があるようだ。
欧州とアメリカの動向
欧州は対ロ防衛費の増額とウクライナ停戦に向けての合意に関して協力を求めるよう圧力を受けている。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、フランスのマクロン大統領と英国のスターマー首相と会談し、ウクライナに対する財政的、軍事的支援について議論した。
トランプ大統領のロシア寄りとも取れる発言や、ウクライナ支援に対する条件提示は、欧州諸国やウクライナにとって懸念材料となっている。特に、ウクライナの主権や領土一体性の原則が損なわれる可能性が指摘されており、国際社会は慎重な対応を求められている。トランプ大統領は「プーチン大統領が望めば、ウクライナの全土を占領できるだろう」との発言も行っており、物議を醸していた。
ピート・ヘグゼス米国防長官は、キエフのNATO加盟は非現実的だと発言していた。ゼレンスキー大統領は、「同氏がウクライナ戦争を始めた」とするトランプ大統領の発言を虚偽だと非難した。ランプ大統領は後に「ロシアが先制攻撃した」と認めたが、 戦闘をもっと早く止めなかったのは前任者のジョー・バイデン大統領とゼレンスキー大統領だとする考え方は崩さなかった。
ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領が「偽情報の空間」にいると非難すると、トランプ大統領はゼレンスキー大統領を「独裁者」と非難した。そして、現在、米国内における反ゼレンスキー感情を扇動している。しかし、最新の世論調査ではトランプ大統領の支持率が低下し、プーチン大統領に対して「信用しない」と回答する有権者が8割程度存在したことが明らかとなった。これを受けて、トランプ大統領は発言のトーンを弱めており、エコーチェンバーに篭っている懸念がある。
米国とロシアの当局者は今週、戦争を終わらせる方法について「予備的」協議を行うためサウジアラビアで会談した。しかし、ウクライナ政府が排除されるなどしたため、欧州各国が米ロを非難する形となった。
帝国主義への回帰
このロシアという大国とアメリカという覇権国家のみによるウクライナ領土の割譲交渉は、「(反知性的な)帝国主義への回帰だ」とする非難が起きている。
想像してほしい。星条旗を身にまとった男たちが、あなたの家にやって来る。彼らは無料であなたの家のもの利用し、消費し、汚し、片付けや料金も支払わずに立ち去っていく。さもそれが当然かのように。
アメリカの新しい帝国主義が幕を開けたのかもしれない。
彼は民族自決や主権を無視する。「ガザをアメリカが買い取る」発言は、そうした民族的な自決権、各国の主権を無視しているだろう。
そもそも「ガザは誰が持っているのだろうか?」
トランプは「誰からガザを買い取ろう」と言っているのだろうか?
事実上、ガザはパレスチナ人が住んでいるため買い取ることはできない。「ガザを買い取って高級リゾートにする」には、パレスチナ人を追放しなければならない。それをどうやって起こすのかといえば、アメリカとガザが戦争状態に入ることを意味する。つまり、米軍をガザに派遣して、パレスチナ人を弾圧すればよい。
そして、トランプは「金になる」ならば、そうするはずである。なぜなら、ガザ周辺とゴラン高原には、未だに膨大な石油と天然ガスが存在するからである。もしハマスが石油採掘を妨害しようものなら、すぐに「リゾート化計画」を進めるだろう。
つまり、「ガザを買い取る」という発言はトランプ流のハマスに対する威圧行為なのである。
トランプ大統領は2019年にイスラエルの主権を承認していた。当然ながら、現在もこの姿勢を崩してはいない。つまりどの国よりも先んじて、トランプはイスラエルとの交渉を優先して受けられる権利を得たのだ。
イスラエルは何を得るのか?
イスラエルは石油よりも「水」を重視している。
ゴラン高原にはガリラヤ湖という水源が存在し、ヨルダン川へと繋がっている。イスラエルは現状、下流に位置している。もし、シリアやパレスチナが水の流れをせき止めてしまえば、イスラエルは深刻な水不足に悩まされるだろう。
現に1967年に勃発した中東戦争において、イスラエルはゴラン高原を確保した。しかし、イスラエルとアラブ諸国のゴラン高原における緊張状態は続いた。だが、アサド政権の崩壊によってシリア軍が混乱している最中、イスラエル軍はゴラン高原を突き抜けてシリアまで前進した。そして現在も、ゴラン高原の緩衝地帯を占領している。
イスラエルとしては60年間悩まされていた水資源の問題を武力によって解決した。この水がある限り、イスラエルは中東において優勢を維持できるだろう。
この優勢を維持できるなら、ゴラン高原にある石油採掘権などアメリカにくれてやると言わんばかりなのだ。だからこそ、ネタニヤフ首相はトランプ大統領と会談し、ハマスとの停戦に合意したのである。ハマスが停戦に応じたのも、水を掌握されたことでガザへの水供給に深刻な打撃を受けたからであると推察される。
欧州とウクライナ、アメリカとウクライナ、そしてアメリカとロシア、ハマスとイスラエル、イスラエルとアメリカが入り乱れて生じており、ロシア・ウクライナ戦争やイスラエルを中心とする中東問題の命運は今年で決まるかもしれない。
引き続き、注視したい。
ウクライナ戦争やパレスチナ問題に関する参考書籍おススメ
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