赤いきつねが炎に燃えている。
なぜか女性と思われるアカウントから発せられるCMに対する「キモイ」の大合唱。
実際、これは炎上と呼べるものだったのだろうか?
筆者はゲームレビューなどの動画を好んで視聴するが、実はゲームレビュー界隈でも「炎上と言うには怪しい小さな劇事」を「炎上」と断じる動画が数多くある。一部の炎上レビュー動画は「放火系」と非難されることも多々あります。
実際、問題が発生した直後、爆発的に拡散される炎上とは異なり「非実在型ネット炎上」というものは、ごくごく局所の「不満」や「意見」が発端になるケースが多いのです。
なぜ局所的な不満が炎上に発展するのか?
これは私のようなブロガーも注意しなければならないのですが「アフィリエイト」や「広告料」を狙う悪しきインフルエンサーの存在が挙げられます。
Xアカウントを持つCMに批判的なインフルエンサーが一人いたとすれば、万単位で認知されることが多いでしょう。さらにインフルエンサーが取り上げれば、SNS上の議題設定として取り上げられ、「まとめサイト」が立ち上がることになります。
すると、世論が瞬く間に発生します。
単純ですが、効果的なネガティブキャンペーンです。
以下のフローは、そうした炎上の経路になります。

「局所的だった批判」は、とある「インフルエンサーA」によって爆発的に拡散されます。するとインフルエンサーAをフォローしている人々やAのフォロワーのフォロワーたちがそのイベントに食いつきます。
中には「インフルエンサーB」や「まとめサイト運営者」、「AIなどを駆使してデマやフェイクを拡散するユーザー」などが紛れています。するとBのファンやまとめサイトを普段から利用している人々、政治垢、陰謀論垢などにもイベントが認知されるのです。
この「まとめサイト」にはYouTubeやTikTok動画なども含むことができるでしょう。するとCMは「炎上して当然」という刷り込みが視聴者間で共有されます。
普段から、アニメを嫌悪するクラスターや女性が登場する広告に過剰反応するクラスターは喜んで炎上に参加するでしょう。
そして、ネット上でまんべんなく広がった炎上は、マスメディアによって「公論化」してしまうのです。この点で、マスメディアもまた炎上に加担しているというわけですが、彼らは絶対に認めようとはしないでしょう。
実際に多くの人が問題にしているわけではないですが、「ネットにおける拡散の仕組み」によって過剰に可視化され、世論が形成されているように見えてしまうのが特徴です。
認知されやすいのは「過激な投稿」?
実際に極端な意見を持つネットユーザーは少ないです。ネット研究をされている山口真一先生によれば一度の炎上につきネガティブワードを使用しているユーザー「40万人に1人」の割合だといいます。
中々に興味深い数字ですね。
しかし、インプレッションを得やすい投稿もまたそうしたネガティブワードなのです。
そもそも私たちはなぜSNS上で「過激な発言」をよく目にするのでしょうか?
それはむしろ逆に考えてほしいのです。「過激な発言が目立つ」のではなく、「特定のテーマでは過激な発言をする人しか投稿しない」のです。
つまり、SNSでは過激な発言をする人たちの方が少数派だといえるでしょう。



これはなぜか?
理由は簡単で、皆がネット上でも理性を持っているからだといえるでしょう。「この発言はまずいんじゃないか?」「あまり他人ともめたくないな」「下手に発言して嫌な目に遭いたくない」という心理が働く人の方が、実際は多いのです。
その人たちは発言を「控える」ため、特定のテーマでは「過激な発言」しか投稿されず、それがインプレッションを稼ぐことで、アルゴリズム上の上位に君臨するようになるのです。
またSNSユーザーの多くは、能動的発信にそれほど注力はしないでしょう。とりわけ趣味や多少の不満や意見を述べることはあっても、多くは自分の好きなことに時間を費やしています。しかし、最初から政治やジェンダーに関心が高い人々は能動的発信をするでしょう。すると、過激な論調がまるで世論のように見えてしまいがちです。
これらの人々を「ノイジーマイノリティ」といいます。声だけが大きい少数派という意味で使われている用語です。
ノイジーマイノリティに加担するマスコミの罪
むしろ、こうしたノイジーマイノリティを「マイノリティ化」させてしまうのはテレビや雑誌などのマスコミ報道です。大半の人々は、問題が起きていることも認識しておらず、多くはマスコミの報道によってはじめて認知するケースが多いわけです。
「ネットでは~」と前置きしつつ、テレビはナレーターや声優を起用して時に愉快に、時に不快なトーンでノイジーマイノリティを表現します。
ネット規制を声高に叫ぶ現状のマスコミは、そもそもそうした誹謗中傷を拡大させている一因になっているという自覚をしなければならないでしょう。
例えば、新型コロナウイルス感染症が流行し、非常事態宣言が出されることになった際、「東京脱出」というハッシュタグがトレンド入りしたと朝日新聞が報道したことがある。
しかし、実際に「東京脱出」のハッシュタグは朝日報道前では20件程度であったという。むしろ「東京脱出」が世間的に認知され拡散されたのは朝日新聞の報道後であり、トレンドも多くが朝日新聞の記事の拡散であったという。
マスコミが広がっていない騒動をあたかも「炎上している」と演出するのだ。
これではもはや炎上系YouTubeの所業とさほど大差はない。
スポンサー企業は、昨今の炎上の起爆剤となっているマスコミとの関係をもう少し精査することをすすめたい。
非実在型ネット炎上といかにして向き合えばよいか?
こうした「無から有を生み出す」が如く行われる「非実在型ネット炎上」に対して、私たちはどのような対応をすべきでしょうか?
第一に、この手の炎上は「正義」ではなく「社会的欲求(Social needs)」に原因があると指摘されています。私たちはイベントやコンテンツを通して「快感」を得たいがために、炎上に加担するというわけです。
例えば、炎上の相手は企業や政治家、有名タレントである場合が多いです。そして彼らは一般人にとっては強大な権力を持った人間あるいは集団です。すると、ニーチェを紐解くまでもなく「ルサンチマン」になった人々が道義的な復讐心や嫉妬心に駆られることがあります。あるいは義憤とも言います。
つまり私たちは他者に対する否定の感情という「社会的欲求」を満たすために炎上を利用することがあるのです。そしてその欲求が尽きることはありません。



そのため、以下にアンガーマネジメントができるかがカギとなります。多くの場合、趣味に没頭するなどしていればあまりそうしたネガティブな欲求を満たすということにはつながらないでしょう。
あるいは「一度、怒ったとしても考え直す時間を設ける癖をつける」ようにすれば、冷静に情報を精査することができます。まずは感情的になってみますが、冷静さを取り戻すために一度スマホから目を逸らすことが重要です。
それはテレビや雑誌を見るときも同じです。近年のマスコミは「ネガティブキャンペーン」の方が数字が取れるということを理解し始めています。すると、ネガティブなニュースやイベントを報道する傾向にあるわけです。
そして、最後に、拡散される情報の信憑性を見極め、「本当に炎上しているのか?」という視点を持つことが求められます。これが一番重要な思考であるといえます。
参考





