大阪地方検察庁の元検事正の性的暴行問題に見え隠れする日本社会の構造的欠陥

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大阪地方検察庁が揺れている。同庁の元検事正である被告が、部下の女性検察官に対する性的暴行の罪で起訴されている。この裁判において、被告は初公判で、起訴内容を認め、被害者に対し謝罪の意を表明した。

ところが、12月10日。事態は急変した。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241211/k10014665181000.html

新たに就任した弁護団は、被害者が抵抗できなかったことについて合理的な疑いがあるとし、被告には故意がなかったとして、無罪を主張する方針を明らかにした。

これに対し、被害者の女性検察官は11日に会見を開き、「初公判での謝罪が保釈のための芝居ではなかったのか」「これほど態度を急変されてしまえば、しかも検察官が行ったことで性被害に苦しむ女性はさらに訴えができなくなる」と強い憤りを示した。

この事件は、検察組織内での権力関係を背景としてパワーハラスメントや、ジェンダー差別に関連する問題を男性が中心となって決定する組織の意思決定プロセスの問題を浮き彫りにしている。
また、法を司る検察が、そのような女性を蔑視する態度を持っていることが暴露されたことで、組織全体の不信感にもつながっている。また、検察内部での情報漏洩や被害者への誹謗中傷など、組織ぐるみでの隠蔽や犯罪まがいの行為があったことも指摘されている。

この国の組織構造にはどのような欠陥があるのだろうか?

目次

経験を踏まえたうえでの議論


意見を述べれば、日本社会における多くの社会構造に男性中心の文化が深く根付いている。

民間企業は是正されつつあるように見えるが、公共インフラや機関はそうはいかない。特に政党、大学、マスコミ、行政機関は非常に男性中心であるように思える。

問題は検察組織だけにとどまらない。大学では現在、理事長や学長を女性にする「ブーム」が存在する。しかし、これは女性から沸き起こったわけではない。むしろ、彼女たちを採用するのも、支持するのも、そして輔弼するのも、男性なのである。

男性の意思決定によって、女性が決定される。この矛盾が解消される日はまだ先かもしれない。

誰が、ハラスメントと決めるのか?

そしてもう一つ。
ハラスメント防止対策のリーフレットや規則などを作るのもまた男性である。つまり、何をもってハラスメントとするのかは男性が決めているのである。そのため、窓口が中立性を保てないという問題がある。

筆者も、女性がハラスメントを受けたとする相談を目の当たりにしたが、多くの場合、大学では「要注意学生」のように見なされるため、深刻に受け取られない。

こうした構造上の問題点が指摘されているが、民間企業の大幅な修正や改善と異なり、大学やマスコミ、政党は特にこの動きが緩慢である。政党の場合は人材不足であるが、大学やマスコミは分野によっては女性が軒並み多い分野も存在する。

特にいただけないのは、ジェンダーバランスを解消せよと論じている新聞社やテレビまでもが、男性中心という文化を持っていることだ。多くのマスコミ企業の重役は男性で占められており、代表取締役にも女性が少ない。日テレの女性キャスターにだけ求める「清廉性」なども、男性中心主義の証左ではないか。

マスコミは、こうした女性の地位問題について論じる気はほとんどないのではないか?と疑問に思ってしまう。

検察は歴史的に見ても、男性が多数を占める職場であり、女性職員が少数派である。女性職員は、意見を述べたり不正を指摘する際に孤立するリスクが高く、結果として権力関係の中で不利な立場に追いやられやすい。女性のリーダーシップが軽視される場合もある。
しかし、検事の持つべき能力は、決して性別に比例して決まるわけではない。

逆を言えば、女性であっても、権力を持てば汚職などを行なう確率も高くなる。しかし、それよりも優秀な人材が増えるのである。

よりによって「検察」という問題

そして、特に今回の事件で闇が深いのは現職であった検察官たちが、こうした女性に対する暴行やハラスメントを問題視しなかった点である。ここに「二つの権力の非対称性」が生じている。

一つ目の権力の非対称性は、検察組織が階級的な組織構造を持ち、上司の指示に従うものである。この場合、上位の権力者が不正を行った場合、下位の職員がそれに抗うことは非常に難しい

二つ目の権力の非対称性は、検察と国民の階級的な権力構造である。国民は検察よりも立場が弱い。つまり、女性に対する差別意識を持った権力組織が国民の問題を扱う場合、どうしても女性を下位の存在として起きかねない。すると、女性に対する犯罪の多くは黙認されるのである。よりによって、司法権力の一角がこのような構造を抱えているのは倫理上、極めて不適切である。

また、この問題は検察組織の内部監査能力が欠如していることを物語る。上司の行為を監視する仕組みが不十分であり、権力の乱用が発覚しにくい構造があるのだ。

マスコミは云う。

「ハラスメント相談窓口や通報システムの欠如を改善するべきだ!」

しかし、それを作っているのは誰だろうか?

検察内にも性的被害やハラスメントに関する通報制度はあるだろう。もし、なければそれこそ大問題だが、行政機関にも、市民団体にも相談窓口は存在する。しかし、それが実効性を伴う形で運用されていないのなら、行政もマスコミも司法も、そうした悩みを抱えている人たちを救済しない意図を持つ可能性がある。

さらに今回のように、通報した結果、被害者が不利益を被ることがあればなおさら「改善せよ!」の声は空虚に響く。

妊婦体験をしなければ理解できない情けなさ

マスコミが報じ、ネットでやり玉によく上がるのが、学校での妊婦体験である。

この体験には、女性の身体的な感覚を男性も理解し、共感できるといった教育効果が存在する。妊婦体験キットなどを通じ、男性は妊娠中の女性が感じる身体的負担(重さ、姿勢の制約、動きづらさなど)を疑似体験することで、妊娠・出産に伴う困難への理解を深める。

そして、妊婦の負担を「自分ごと」として考えるきっかけになる。そうすれば、妊娠中の女性への配慮や尊重が促進できるのだ。

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しかし、こうでもしなければ男性の理解が追い付かない社会であるという現状ほど情けないことはない。

もうすでに亡くなった私の恩師が云う。

「結婚して、奥さんが妊娠して、出産するなら、絶対に立ち会え。あの産前産後の苦痛と負担を男は絶対理解できない。嫁さんが痛みをこらえながら声を振り絞っている姿を見て、男は初めて理解できる。そして後悔する。出産に立ち会わなきゃ、奥さんを幸せにすることなど一生できないだろう」

この言葉は常に女性問題を取り扱う際に、脳内にリフレインしている。

実際、出産に立ち会わなかった男性を見ていると、「そうだろうな」と心の中で思うことが多くある。

男性諸兄は、男であることに自尊心があるのならば、現状をもっと深く恥ずかしむべきであろう。

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この記事を書いた人

ほのぼの過ごしてるフリーライター。物語エッセイ、小説、時事記事などを書いてます。元リスク学研究員であり、現在情報コンサルにてインターネット・危機管理部門を担当。古書ECのプロジェクトを推進中。たまに俳句。積書が多く、横溝正史・京極夏彦が大好物。

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